ゴスペルやボイストレーニングのレッスンをしていて、よく私は『声がうわのそらになる』という話をします。
次に歌うべき歌詞とか周りの状況、人の目、自分自身へのツッコミなどいろんなことに気を取られて、今、この瞬間に出している自分の声に集中できていない状態。
声の安定度や歌の伝わり方は『今、この瞬間の声、歌に集中できているかどうか』で大きく差が出ます。
人間の脳には色々な物事を効率よくこなしていくために、今やっていることに集中しなくても自動的に物ごとをこなしていける機能があります。
考え事しながらでもきちんと家まで帰ったりお風呂に入ってちゃんと体を洗って出てこられますよね?
鼻歌歌いながら自転車にも乗れるし、次の段取りを考えながら料理もできる。
ひとつずつ、いちいち目の前のことに集中していたらなかなか物事が進まなくなってしまいます。
『ながら作業』
これは私たちが日常を効率よく生活していくためにとても大切な機能なのです。
ただ。
声を出している瞬間。
他のことを考えながら声を出していると、その状態はもろに声に現れます。
少しづつ音程が下がっていったり
少しづつ喉が締まってきたり
歌であれば全く心のこもっていない歌になる
なので、「今、この瞬間に集中する」ということを意識するのってとても大事。
この「今、この瞬間に集中する状態」のことをよく『今ここ(イマココ)』なんて言ったりします。
『今出している自分の息に集中する』
『今出している自分の声に集中する』
『今そこで生まれている音楽に集中する』
これがうまくできた時、とても安定した声になり、「いい歌」が歌えます。
だけど私たちは日常の中であまりにも『ながら作業』に慣れすぎていて、自分の意識が『今ここではないこと』に気がつかなかったりするんですね。
無意識にふっと違うことを考えることが習慣化されています。
あまりに習慣化されているので、無意識にこの「ながら作業状態」で歌っていることも多く、レッスン内で指摘されて初めて気がつく人も。
この「今ここに集中するトレーニング」もレッスンの一環。
(ちなみに「自分に酔って歌う」というのはこの状態ではありません)
そしてこの『今ここ』、最近では脳科学などの分野でとても注目をされていて、この『今ここ』の状態を作ることが「集中力アップ」や「ストレス軽減」「自律神経回復」に効果があるとされ、『マインドフルネス』という名前で注目が集まっているそうです。(宗教的な要素を排除した『瞑想』と言う感じかな?)
ネットで調べてみたら詳しく説明しているサイトを発見しました。(→こちら)
このサイトによると、アメリカのグーグル社やフェイスブック、インテル、マッキンゼーなどの企業でもこの『マインドフルネス』が取り入れられているそうで、NHKなどでも『マインドフルネス』についての番組が放送されたそうですね。
小学校などの教育現場などでも導入されて、いじめや差別が減少したなどの報告もあるそうです。
すごい!
集中して歌を歌えたあと、気持ちがとっても元気になるのはそんな理由もあるんですね。